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1枚目の写真の補正とRAW現像

  

1枚目の写真の補正

では、1枚目の写真の補正を行いましょう。 なお、1枚目の写真は、補正したらすぐにRAW現像、つまりJPEG画像を出力します。 2枚目から7枚目は最後にまとめてRAW現像しますが、1枚目だけは補正後すぐにRAW現像します。

  
RawTherapeeでは、すぐにRAW現像することも、最後にまとめてRAW現像することもできます。 両方の手順を説明しておきたいので、1枚目だけは補正後すぐにRAW現像します。

以下に1枚目の写真を再掲載します。 なお、この写真はカメラが出力した撮って出しJPEG画像です。

1枚目(samplephoto1.orf) - 青かぶりしている -画像を拡大する
1枚目(samplephoto1.orf) - 青かぶりしている -

夜間に蛍光灯を点けた室内で撮影したため色かぶりしています。 ホワイトバランスを "電球" にして色かぶりさせました。

編集対象の写真を選択する

現在、ファイルブラウザタブが選択されており、中央部には画像の一覧が表示されているはずです。 その一覧から1枚目の写真(samplephoto1.orf)を選択し、補正(編集)を開始します。

1. 1枚目の写真(samplephoto1.orf)をダブルクリックする
1. 1枚目の写真(samplephoto1.orf)をダブルクリックする

上図のように一覧に表示されている1枚目の写真(samplephoto1.orf)をダブルクリックします。

ダブルクリックしても何の変化もないかもしれませんが、時間がかかっているだけですので心配いりません。 画面が切り替わるまでそのまま待っていてください

  
RawTherapeeはPCへの負荷が高いため、ダブルクリックが認識されないこともあります。 その場合は、最初にクリックして選択し、その後にダブルクリックしてみてください。
2. 画面が切り替わる
2. 画面が切り替わる

上図のようにしばらく待っていると画面が切り替わります。 ではここで、画面左上に注目してください。

3. 編集タブに切り替わる
3. 編集タブに切り替わる

上図のように編集タブが選択されています。 今まで選択されていたファイルブラウザタブから自動的に編集タブに切り替わりました。

このようにファイルブラウザタブで画像をダブルクリックすると、自動的に編集タブに切り替わります。

それでは、編集タブに切り替わったことでメインウィンドウがどう変わったのかを見てみましょう。

4. 編集タブの画面レイアウト
4. 編集タブの画面レイアウト

上図のように編集タブが選択された状態では、画面は8つの領域に分かれます。 画面のそれぞれの領域の意味・役割は以下の通りです。

No.
名称
意味・役割
(1)
プレビューパネル
・画像のプレビューが表示される
(2)
画像スライド
・同フォルダ内の画像が一覧で表示される
・編集対象を切り替えることもできる
(3)
ヒストグラム
・色の分布が表示される
(4)
ナビゲータ
・画像が縮小表示される
・マウスカーソル位置の色の情報が表示される
・プレビュー範囲の移動にも使える(※1)
(5)
履歴
・編集を開始してからの履歴が表示される
・履歴の特定の時点に編集を戻すこともできる
(6)
スナップショット
・補正された画像を一時的に保存する
(7)
処理プロファイルセレクタ
・適用する処理プロファイルを選択する
・処理プロファイルの管理を行う
(8)
ツールボックス
・各種編集(補正)を行うためのツール
  • ※1 (1)のプレビューパネルに画像が収まっていない場合にドラッグで表示範囲を移動させることができる

詳細については実際の操作を交えながら後ほど説明します。

ではここで、写真を配置したフォルダを見てみましょう。

5. サイドカーファイル(.pp3)が作成されている
5. サイドカーファイル(.pp3)が作成されている

上図のように ".pp3" が足された名前のファイルが作成されています。 このファイルはサイドカーファイルと呼ばれるもので、サイドカーファイルには処理プロファイルが格納されます

サイドカーファイルについて

サイドカーファイルには、写真を補正するための処理プロファイルが格納されます。 処理プロファイルとは、写真を補正するための設定値群のことです。

RawTherapeeを終了して再起動すると、このサイドカーファイルから処理プロファイルが読み込まれます。 つまり、前回の編集の続きができるのです。

サイドカーファイルがあるおかげで、RawTherapeeはRAWファイルに手を加えなくて済んでいます。 処理プロファイルをサイドカーファイルに保存できるので、RAWファイルには何も書き込む必要がないのです。

RawTherapeeの非破壊RAWファイル編集を支えているのがサイドカーファイルという仕組みです

補正しやすいようプレビューパネルを調整する

実際の補正作業に入る前に、プレビューパネルを補正に適したレイアウトにしましょう

1. 画像の情報が邪魔
1. 画像の情報が邪魔

上図のようにプレビューパネルには画像だけでなく、画像の情報も表示されています。

カメラ機種やレンズ、F値やシャッター速度などの情報が表示されていますが、正直なところ邪魔です。 画像の情報は非表示にしてしまいましょう

2. [画像の情報]ボタンを押す
2. [画像の情報]ボタンを押す

上図のようにプレビューパネルの上部にある[画像の情報]ボタンを押します(またはキーボードのI (アイ) を押します)。

  
"Information" から連想して覚えましょう。
3. 画像の情報が表示されなくなる
3. 画像の情報が表示されなくなる

上図のように画像の情報が表示されなくなります。 これで画像が見やすくなりました。

次に、補正前と補正後の両方の画像が表示されるようにレイアウトを変えます。

4. [補正前 / 補正後 切り替え]ボタンを押す
4. [補正前 / 補正後 切り替え]ボタンを押す

上図のようにプレビューパネルの上部にある[補正前 / 補正後 切り替え]ボタンを押します(またはキーボードのSHIFT + Bを押します)。

  
"Before / after" から連想して覚えましょう。
5. 補正前画像と補正後画像が左右に並ぶ
5. 補正前画像と補正後画像が左右に並ぶ

上図のように補正前画像と補正後画像が左右に並びます。 左が補正前で右が補正後です。

ニュートラルについて解説

ちょっと脱線しますが、ニュートラルについて説明しておきます。 RawTherapeeでは、補正していない状態のことをニュートラルといいます。

  
全く補正していない訳ではなく、ホワイトバランスだけは調整された状態がニュートラルです。

では、現在プレビューパネルに表示されている画像がニュートラルなのでしょうか。 いえ、そうではありません

何度も説明したように、RawTherapee 5.4以降ではRAWファイルに埋め込まれている撮って出しJPEG画像を真似るように編集開始時に自動補正されます。 つまり、すでに補正されているのです。

  
補正がかかっているからサイドカーファイル(.pp3)が作成されたというわけです。

ではここで、画面上部の画像スライドの1枚目の写真に注目してください。

1. 画像スライドのサムネイルにチェックのアイコンが描かれている
1. 画像スライドのサムネイルにチェックのアイコンが描かれている

上図のように画像スライドの1枚目の写真のサムネイルにチェックのアイコンが描かれています

このチェックのアイコンは、画像が補正されていることを表しています。 別の表現をすれば、サイドカーファイル(.pp3)が存在しているということです。

ここで試しに、この写真にニュートラルの処理プロファイルを適用してみましょう。 つまり、ホワイトバランス以外は補正されていない状態にしてみます。

  
RawTherapeeにはニュートラルに補正する処理プロファイルが最初から用意されています。
2. 処理プロファイルを(ニュートラル)に変更する
2. 処理プロファイルを(ニュートラル)に変更する

上図のように右側のパネルの上部にある処理プロファイルから "(ニュートラル)" を選択します。

3. 補正後画像が変化し履歴が追加される
3. 補正後画像が変化し履歴が追加される

上図のように(1)の補正後画像が暗く変化し、(3)の履歴が追加されます。 (2)の補正前画像は変化していません。

(1)の補正後画像が暗くなったのは、もちろんニュートラルの処理プロファイルが適用されたからです。 ホワイトバランス以外は補正されていない状態なため、暗くなりました。

- 補正前画像・補正後画像の内容 -
補正前画像 編集開始時の状態
補正後画像 ニュートラル
  
多くのデジタルカメラでは、撮影時の露出を利用者が設定した露出よりも-0.3EV程度低く設定しているようです。 露出不足で撮影し、JPEG生成時に逆にプラスに露出補正しているとのこと。 そのため、ニュートラルの状態では暗くなることがほとんどです。

では次に、標準の処理プロファイルを適用してみましょう。 マニュアルによれば、標準の処理プロファイルは "Auto-Matched Curve - ISO Low" です。 この処理プロファイルが、RAWファイルに埋め込まれている撮って出しJPEG画像を真似る処理プロファイルとのことです

  
which as of RawTherapee 5.4 is set to "Auto-Matched Curve - ISO Low"
 
- 引用元 -
https://rawpedia.rawtherapee.com/Getting_Started#Edit_your_first_image
4. 処理プロファイルをAuto-Matched Curve - ISO Lowに変更する
4. 処理プロファイルをAuto-Matched Curve - ISO Lowに変更する

上図のように右側のパネルの上部にある処理プロファイルから "付属のプロファイル" -> "Auto-Matched Curve - ISO Low" を選択します。

5. 補正後画像と修正前画像が変化し履歴が追加される
5. 補正後画像と修正前画像が変化し履歴が追加される

上図のように(1)の補正後画像が明るく変化し、逆に(2)の補正前画像は暗くなりました。 また、(3)の履歴がさらに追加されます。

(1)の補正後画像が明るくなったのは、もちろん "Auto-Matched Curve - ISO Low" の処理プロファイルが適用されたからです。 RAWファイルに埋め込まれている撮って出しJPEG画像を真似て補正されたため明るくなりました。

(2)の補正前画像が暗くなったのは、直近の補正の直前の状態が表示されているためです。 つまり、ニュートラルの処理プロファイルが適用された状態が表示されています。

- 補正前画像・補正後画像の内容 -
補正前画像 編集開始時の状態
補正後画像 ニュートラル

ニュートラルに関する解説の仕上げとして、編集開始時の状態に戻してみましょう

6. 履歴の先頭の行をクリックする
6. 履歴の先頭の行をクリックする

上図のように履歴の先頭の行の "写真を読み込みました | (更新済)" をクリックします(ダブルクリックではありません)。

7. 編集開始時に戻る
7. 編集開始時に戻る

上図のように(2)の補正前画像が明るく変化します。 (1)の補正後画像は明るいままです。 また、(3)の履歴には何も追加されていません。

注目すべきは、(1)の補正後画像と(2)の補正前画像が同じであることです。 ただし、同じ時点の画像を表示しているわけではありません。 (2)の補正前画像には、"Auto-Matched Curve - ISO Low" の処理プロファイルの適用結果が、(1)の補正後画像には編集開始時の状態が表示されています。

- 補正前画像・補正後画像の内容 -
補正前画像 Auto-Matched Curve - ISO Low
補正後画像 編集開始時の状態

(1)の補正後画像と(2)の補正前画像が同じであることから、編集開始時の処理プロファイルが "Auto-Matched Curve - ISO Low" というマニュアルの記載は間違っていないことがわかります。

ホットピクセルの補正

では、実際の補正作業に入りましょう。 まずは、ホットピクセルの補正から実施します。 ホットピクセルが存在するかどうかを確認し、あれば補正します。

  
 
ホットピクセルとは明るい派手な色の点のことで、長秒時撮影などでセンサーが熱を帯びた時に発生するノイズです。 また、ISO感度を上げた場合などにも発生することがあります(右図が熱ノイズによるホットピクセル)。
  
 
カメラのイメージセンサーの一部が壊れていることが原因で、常に白色になるピクセルのこともホットピクセルと呼びます。 イメージセンサーの破損が原因であるため、シャッター速度やISO感度などには関係なく毎回同じ場所に現れます(右図がセンサー破損によるホットピクセル)。

写真の補正には、ホワイトバランスの補正・明るさの補正・歪みの補正などありますが、補正内容によって最初の方に実施すべきもの・最後の方に実施すべきものがあります。 ホットピクセルの補正が最初にやるべき補正です。

  
イメージセンサーの破損により常に黒色になるピクセルのことはデッドピクセルと呼びます。 こちらも、シャッター速度やISO感度などには関係なく毎回同じ場所に現れます。

ホットピクセルに限らず、ノイズの有無を調べるには表示倍率を100%以上に上げる方がいいです。 今回は表示倍率を 100% に上げます。

1. [100%にズーム]ボタンを押す
1. [100%にズーム]ボタンを押す

上図のようにプレビューパネルの下部にある[100%にズーム]ボタンを押します(またはキーボードのZを押します)。

  
"Zoom" から連想して覚えましょう。
2. 表示倍率が100%になる
2. 表示倍率が100%になる

上図のように表示倍率が100%、つまり、ピクセル等倍で表示されます。 これで細部が確認できるようになりました。 1ピクセルのノイズも見つけやすくなるでしょう。

ではここで、左側のパネルのナビゲータに注目してください

3. ナビゲータに赤枠が出現する
3. ナビゲータに赤枠が出現する

上図のようにナビゲータに赤枠が出現しています。 このように、プレビューパネルに画像が収まりきれない場合は、現在の表示範囲が赤枠で表示されます

ナビゲータの赤枠は、表示範囲を移動させるためにも使えます。 赤枠をマウスの左ボタン(マウスの左ボタン)でドラッグすることで表示範囲が移動します。

4. 赤枠を画像の左上までドラッグする
4. 赤枠を画像の左上までドラッグする

上図のようにナビゲータの赤枠を画像の左上までドラッグします。 赤色の矢印はドラッグの動きを表しています。

5. 表示範囲が画像の左上に移動する
5. 表示範囲が画像の左上に移動する

上図のように表示範囲が画像の左上に移動します。 このように、ナビゲータでは表示範囲を移動させることができます。

では、表示範囲を移動させながらホットピクセルを探してください。 この写真にホットピクセルは見つからないはずです。

この写真のホットピクセルは見つかりませんでした。 よって、ホットピクセルの補正は不要です

  
この写真には、イメージセンサーの破損が原因で必ず白色になるピクセルがいくつかあります。 明るい部分なので場所を知らなければ探せないでしょう。

ホットピクセル探しが終わりましたので、表示倍率を戻しておきましょう

6. [画像全体を画面に合わせる]ボタンを押す
6. [画像全体を画面に合わせる]ボタンを押す

上図のようにプレビューパネルの下部にある[画像全体を画面に合わせる]ボタンを押します(またはキーボードのALT + Fを押します)。

  
"Fit to screen" から連想して覚えましょう。
7. 画面に合うように表示倍率が調整される
7. 画面に合うように表示倍率が調整される

上図のように画面に合うように表示倍率が調整されます。

次の記事へ

長くなってきましたので、そろそろ一区切りします。 続きは次の記事を参照ください

  
  

まとめ

ファイルブラウザタブで画像をダブルクリックすることで、自動的に編集タブに切り替わります。 編集タブには、プレビューパネル・画像スライド・ヒストグラム・ナビゲータ・履歴・スナップショット・処理プロファイルセレクタ・ツールボックスがあります。 それぞれの領域の意味・役割は以下の通りです。

名称 意味・役割
プレビューパネル ・画像のプレビューが表示される
画像スライド ・同フォルダ内の画像が一覧で表示される
・編集対象を切り替えることもできる
ヒストグラム ・色の分布が表示される
ナビゲータ ・画像が縮小表示される
・マウスカーソル位置の色の情報が表示される
・プレビュー範囲の移動にも使える
履歴 ・編集を開始してからの履歴が表示される
・履歴の特定の時点に編集を戻すこともできる
スナップショット ・補正された画像を一時的に保存する
処理プロファイルセレクタ ・適用する処理プロファイルを選択する
・処理プロファイルの管理を行う
ツールボックス ・各種編集(補正)を行うためのツール

編集を開始すると、サイドカーファイルが作成されます。 サイドカーファイルのファイル名は、画像のファイル名に ".pp3" が足されたものです。 サイドカーファイルには処理プロファイルが保存されます。

プレビューパネルに表示されている画像の情報はいつでも非表示にすることができます。 また、プレビューパネルの画像は補正前と補正後を左右に並べて表示させることもできます。

操作/コマンド 説明
[画像の情報]ボタン
(または)
I (アイ)
画像の情報の表示/非表示を切り替える
[補正前 / 補正後 切り替え]ボタン
(または)
SHIFT + B
補正前画像・補正後画像を並べて表示する/しない

RawTherapeeでは、ホワイトバランスのみを補正した状態のことをニュートラルといいます。 ただし、標準の処理プロファイルを適用してもニュートラルにはなりません。 標準の処理プロファイルは "Auto-Matched Curve - ISO Low" であり、RAWファイルに埋め込まれている撮って出しJPEG画像を真似るように補正されます。

長秒時撮影や高感度撮影で発生することのある明るい派手な色の点のことをホットピクセルと呼びます。 ホットピクセルの補正は最初に実施すべきです。 ホットピクセルを見つけるには表示倍率を100%以上に上げるのがいいでしょう。

操作/コマンド 説明
[100%にズーム]ボタン
(または)
Z
表示倍率を100%にする
[画像全体を画面に合わせる]ボタン
(または)
SHIFT + B
画面に合うように表示倍率を調整する
 
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